結論:医療安全管理者とは、2026年4月から病院・有床診療所に配置が義務になった職
医療安全管理者は、病院などで医療安全の仕組みを動かす担当者です。2026年4月1日から、病院・有床診療所・入所施設のある助産所に配置が義務になりました。
国家資格ではなく、施設の管理者が、十分な知識を持つ常勤職員の中から配置します。
施設の方へ
- 対象:病院、有床診療所、入所施設のある助産所
- 要件:十分な知識を有する常勤職員。医療関連資格の有無は問わない
- 兼務:病院では管理者(院長)と兼務不可、他の役職とは可。診療所・助産所は管理者とも可
- 猶予期間(経過措置):改正省令の附則に定めはない
これから担う方へ
- 資格:国家資格や免許はない
- 配置:施設の管理者が行う
- 研修:義務ではなく、施行通知で受講が「望ましい」とされる。医療安全対策加算を取る施設では、40時間以上の研修の修了が要件
厚生労働省の検討会報告書によると、2025年8月時点の医療情報ネット(ナビイ)に基づく集計で、約95%の病院がすでに医療安全管理者を配置しています。
多くの病院にとっては、新しく置くことよりも、今の担当者が新しい要件(常勤であること、病院では院長と兼務しないこと)に合っているかを確かめることが中心になると考えられます。
配置義務の根拠と対象:無床診療所はどうなる?
根拠は、医療法施行規則第1条の11第1項第5号です。病院等の管理者は、医療安全について「知識を備え、かつ、責任をもつて業務を行う者」を医療安全管理者として配置することとされています。
この号は2026年4月1日施行の改正で新しく加わりました。改正省令の附則には、医療安全管理者の配置について経過措置の定めはありません。
対象は、病院、患者を入院させるための施設を有する診療所、入所施設を有する助産所です。条文のただし書きで、第5号はこれらに限るとされています。
そのため、無床診療所や入所施設のない助産所は、医療安全管理者の配置義務の対象外です。
ただし、同じ条の安全管理の指針(第1号)、職員研修(第3号)、事故報告等の方策(第4号)、安全管理に関する記録の整備(第6号)は、無床診療所を含む全ての病院等が対象です。
医療安全管理者になるには:誰がなれるか・資格・研修
医療安全管理者は国家資格?
国家資格ではありません。施行に伴う厚生労働省の通知(医政地発0331第1号)は、医療安全管理者を「十分な知識を有する常勤職員」とし、医療関連資格の有無は問わないとしています。
資格を持たない人を配置する場合は、管理者が、必要に応じて医療資格を持つ人から支援を受けられる体制を整えることとされています。
なるまでの流れ
- 医療法上の配置:施設の管理者が、常勤職員の中から配置する。資格・研修・経験年数の要件はない
- 加算を取る施設:40時間以上の研修を修了した人を医療安全管理者として配置する(加算2で医療資格のない職員を充てる場合は、医療安全管理部門での1年以上の業務経験も必要)
- 配置した後:業務指針は、継続して学習と経験を積み重ねることを「必須の要件」としている
通知では、医療資格を持たない人などが就く場合、先に「医療安全の基本的知識」「安全管理体制の構築」を学び、一定の業務経験を経てから研修を受けることも想定されています。
資格はどうやって取得する?
一般に「医療安全管理者の資格」と呼ばれているのは、養成研修の修了証や、団体による認定です。
たとえば全日本病院協会の養成課程講習会では、修了者に医療安全対策加算の研修証明となる修了証が授与されます。
あわせて「全日病・医法協認定 医療安全管理者」として認定期間5年の認定証が授与され、所定の要件で更新できます。いずれも国家資格ではありません。
看護師以外でもなれる
検討会報告書によると、医療安全管理者として業務に携わっているのは主に看護師です。一方で、事務職などの医療有資格者ではない人が、各医療有資格者と連携して調整役を担い、効果的な役割を果たしている例も紹介されています。
兼務はできる?専従・専任との関係
通知では、病院の医療安全管理者は管理者(院長)との兼務は不可とし、医薬品安全管理責任者など他の役職との兼務は可としています。診療所と助産所では、管理者との兼務も可能です。
医療法上の医療安全管理者には、専従・専任の定めはありません。求められているのは「常勤職員」であることです。専従・専任は、診療報酬の医療安全対策加算を取るときの要件です(後半で説明します)。
研修は必須?選び方とeラーニング
医療法施行規則には、研修を受ける義務はありません。
施行通知(医政地発0331第1号)は、厚生労働省の「医療安全管理者の業務指針および養成のための研修プログラム作成指針」に沿って開かれている研修を受講することが「望ましい」としています。
一方、医療安全対策加算を取る施設では、研修の修了が要件です。研修は、国または医療関係団体等が主催し、通算40時間以上で、講義と具体例に基づく演習等で学ぶものとされています。
すでに受けた研修がこれを満たさない場合は、足りない事項を補う研修を追加で受ければ差し支えないとされています。
研修を選ぶときは、次の3点を確かめておくと安心です。
- 加算の要件:主催者・40時間以上・講義と演習を満たすと明記しているか
- 受講対象:看護職以外も受講できるか
- 形式:eラーニングと演習がどう組み合わされているか
加算の要件が講義と演習を前提にしているため、eラーニングだけで完結するかは研修ごとに確認が必要です。厚生労働省の研修プログラム作成指針も、研修の方式として「講義のみならず演習を加えることが必要」としています。
なお、2029年4月1日に施行される規定(施行規則第1条の10の6)は、病院などの管理者等が受ける「医療事故に係る適切な対応に関する研修」(医療事故調査制度の研修)についてのものです。
医療安全管理者の養成研修が義務になるわけではありません。
養成研修は、全日本病院協会、日本看護協会、日本医療機能評価機構などが実施しています。
形式は団体によって違います。
2026年10月時点の各団体のページでは、全日本病院協会は講義4日間と演習2日間、日本医療機能評価機構はeラーニング(36時間程度)と参加型研修(6時間程度)の組み合わせです。
日程や費用は年度ごとに変わるため、各団体の募集ページで確認してください。
医療安全管理者の業務内容
施行規則は、医療安全管理者に次の3つを行わせるとしています。
- 委員会の支援:医療安全管理委員会が行う安全管理の業務の支援
- 職員研修:職員研修の全部または一部の実施(管理者が指示した場合に限る)
- 事故報告等:事故報告などの改善の方策を円滑に実施するために必要な業務
厚生労働省の業務指針は、業務の柱として次の5つを挙げています。
- 安全管理体制の構築
- 医療安全に関する職員への教育・研修の実施
- 医療事故を防止するための情報収集、分析、対策立案、フィードバック、評価
- 医療事故への対応
- 安全文化の醸成
情報収集の筆頭に挙げられているのが、医療事故とヒヤリ・ハット事例の報告です。報告をどう区分して集めるかは、インシデントとアクシデントの違い(影響度レベル0〜5)も参考にしてください。
業務指針は、個別の業務の範囲は各医療機関の規模や機能に応じて判断すべきとしています。
医療安全管理部門・推進担当者との関係
医療安全管理部門の設置は、特定機能病院と臨床研究中核病院では施行規則で求められ、専従の医師、薬剤師及び看護師を置くこととされています。
一般の病院では、医療安全対策加算を取る場合に、部門の設置と、全ての部門の専任の職員の配置が要件になります。
業務指針は、医療安全管理者が安全管理委員会や安全管理部門などの運営に参画するとしています。
医療安全推進担当者は、加算の施設基準に出てくる言葉です。施設基準では、医療安全管理者が「各部門における医療安全推進担当者への支援」を行うとされていますが、担当者の定義は示されていません。
各部門の誰を担当にするかは、院内で決めることになります。
令和8年度の改定で、それまでの「医療事故防止担当者」から呼び方が変わりました。
医療安全管理責任者・加算の医療安全管理者との違い
医療法の医療安全管理者
- 根拠:施行規則第1条の11第1項第5号
- 対象施設:病院・有床診療所・入所施設のある助産所
- 資格:問わない
- 勤務形態:常勤(専従・専任の定めなし)
- 研修:受講が望ましい
医療安全対策加算1の医療安全管理者
- 根拠:診療報酬の施設基準(令和8年6月1日適用)
- 対象施設:加算1を届け出る保険医療機関
- 資格:看護師、薬剤師その他の医療有資格者
- 勤務形態:専従(業務が所定労働時間に満たない場合、月16時間まで他の業務も可)
- 研修:40時間以上の研修の修了が必要
医療安全対策加算2の医療安全管理者
- 根拠:同じ施設基準
- 対象施設:加算2を届け出る保険医療機関
- 資格:医療有資格者、または資格を問わず部門で1年以上の業務経験がある職員(この場合は別に医療有資格者を部門に置く)
- 勤務形態:専任
- 研修:40時間以上の研修の修了が必要
医療安全管理責任者
- 根拠:施行規則第9条の20の2第1項第1号ほか
- 対象施設:特定機能病院と臨床研究中核病院
- 資格:特定機能病院については、平成28年の通知で、医師又は歯科医師とされている
- 勤務形態:同通知で、常勤職員であり、副院長などのうち管理者が指名するとされている
- 研修:定期的な研修の受講
医療安全管理責任者は、医療安全管理部門や医療安全管理委員会、医療安全管理者などを統括する立場です。一般の病院や有床診療所には、施行規則上の配置の定めはありません。
加算は、担当者の要件だけでは足りません。
加算1・2とも、医療安全管理部門の設置、部門の業務指針と医療安全管理者の業務内容の整備、全ての部門の専任職員の配置、相談・支援を受けられる旨の掲示などが必要で、部門のカンファレンスは週1回程度とされています。
加算1ではさらに、「患者への影響度が大きいが回避可能性は必ずしも高くない事象」(厚生労働省が示す重大事象の類型の別表2)を医療安全管理部門に集めて傾向を把握し、必要に応じて検証する体制が求められます。
点数は加算1が160点、加算2が70点(入院初日)です。
迷ったときは、次の3点で見分けられます。
- 義務か要件か:医療法の配置義務か、加算を取るための要件か
- 施設の種類:特定機能病院・臨床研究中核病院かどうか
- 研修と資格:研修の修了が配置の条件になるのは加算の場合。医療資格が求められるのは加算1と医療安全管理責任者(加算2は資格のない職員も条件付きで可)
中小病院・有床診療所がまず決めること
1. 誰を配置するか
常勤であること、病院では院長と兼務できないことを踏まえて決めます。加算を取るかどうかで、資格・研修・勤務形態の要件が変わります。
2. 権限と資源を渡す
業務指針は、医療安全管理者を、管理者から安全管理に必要な権限の委譲と、人材、予算、インフラなどの資源を付与されて業務を行う者としています。
3. 報告すべき事例の範囲を指針に書く
厚生労働省の通知(医政発0331第72号)は、医療安全管理委員会に報告すべき事例の範囲と報告手順を指針に記載するよう求めています。
別表1の12の事象は含めること、別表2の12の事象は含むよう努めることとされています。
別表1には、取り違えや異物の体内遺残のように、患者への影響の程度を問わず種類で決まる事象も含まれるため、影響度レベルによる院内の区分とは別に確認しておきます。
4. 委員会と研修を回し、記録を残す
同じ通知では、医療安全管理委員会は月1回程度、職員研修は年2回程度開くこととされています。研修は、開催日時や出席者、研修項目を記録します(参考:医療安全委員会の資料づくり)。
また、管理者が把握した死亡・死産事例から医療事故に当たる可能性のあるものを抽出し、該当するかを判断するまでの流れを指針に書き、判断の結果や理由などを記録して保存することとされています。
原因の究明は、客観的な事実から構造的な原因を分析するもので、個人の責任追及を行うものではないとされています。
5. 報告を出しやすくする
通知は、報告すべき事例を集め、分析することを前提にしています。報告の手間が重いと事例が集まりにくいため、報告の出しやすさも体制づくりの一部として見直しておくと安心です。
スマホから種別を選んで出せる報告の仕組みは、ヒヤリハット報告の機能紹介で紹介しています。
よくある質問
配置しないと罰則や立入検査での指摘はありますか?
医療法の罰則の章(第77条〜第94条)には、医療安全の確保の措置(第6条の12)に違反したことを直接罰する規定は見当たりません。
ただし、都道府県知事や保健所を設置する市の市長などは、立入検査を行うことができます(第25条)。
また都道府県知事は、業務が法令に違反していると認めるときは、開設者に期限を定めて必要な措置をとるよう命じることができ、従わない場合は業務の全部または一部の停止を命じることができます(第24条の2)。
令和8年度の立入検査について、厚生労働省は、新しい2つの通知に基づく立入検査要綱等の改訂を令和9年度に予定しているとし、今年度は立入検査の際に、必要に応じて通知の内容を医療機関に周知するよう都道府県等に求めています。
あわせて、事故事例が医療安全管理委員会に報告・分析され、改善策が院内で共有されているかなどは、今年度も確認する事項に挙げられています。
罰則の有無にかかわらず、配置は2026年4月1日から管理者の義務です。
無床のクリニックにも配置義務はありますか?
ありません。ただし、安全管理の指針、職員研修、事故報告等の方策、記録の整備は対象です。
通知では、無床診療所の職員研修は、院外の研修を年2回程度受講することで代えられるとされています。また、従業者が管理者1名しかいない場合は、管理者への報告などは行わなくても差し支えないとされています。
看護師以外でもなれますか?
なれます。医療関連資格の有無は問われません(詳しくは「医療安全管理者になるには」をご覧ください)。
参考にした公的資料
- 医療法施行規則(第1条の11、第9条の20の2、第9条の25)、医療法(第6条の12、第24条の2、第25条)
- 厚生労働省「医療法施行規則の一部を改正する省令の施行に伴う留意事項等について」(医政地発0331第1号、令和8年3月31日)
- 厚生労働省「病院等における医療の安全を確保するための措置について」(医政発0331第72号、令和8年3月31日)
- 厚生労働省「医療安全管理者の業務指針および養成のための研修プログラム作成指針」
- 厚生労働省「医療事故調査制度等の医療安全に係る検討会 報告書」(令和7年12月22日)
- 厚生労働省「令和8年度の医療法第25条第1項の規定に基づく立入検査の実施について」(医政発0612第10号、令和8年6月12日)
- 厚生労働省「基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」(保医発0305第7号、令和8年3月5日、関東信越厚生局掲載)、令和8年度診療報酬点数表
この記事は、職員ポータル「ラクパス for Hospital」を運営する株式会社Central Medienceが、公的資料をもとに作成しました。




